夏休みこそやってみよう!子どものやる気を引き出す「5つのほめ方」実践ガイド

親子コミュニケーション術

夏休みに入ると、宿題や習い事に対して子どもたちのやる気が下がってしまうことはありませんか。子どもが育つ場には、声にならない葛藤や小さな挑戦があふれています。それに気づき、寄り添えるかどうかが、大人の関わりの価値を大きく左右します。

この記事では元小学校教師の経験をもとに、この夏休みから実践できる「心に響くほめ方」の具体的なコツをご紹介します。毎日の関わりの中で子どもの小さな成長を見つけ、適切に声をかけることで、新学期には自信に満ちた表情のわが子に出会えるはずです。

子どもの自己肯定感を高める!心を育むほめ方

子どもの「がんばり」を見つけて、心に響くほめ方を実践してみませんか。ただ「上手だね」と言うだけでなく、努力や工夫の背景に光を当てることで、子どもの自己肯定感と学習意欲を育むことができます。

行動の裏にある努力を見つける魔法の言葉

筆者が20年前に勤務していた小学校

筆者が20年前に勤務していた小学校

ほめるときに大切なのは、「何をどうがんばったのか」をはっきり伝えることです。例えば、子どもが虫の絵を描いたときに「上手だね」と言うだけではなく、「虫の足を一本一本丁寧に描いているね」「図鑑をよく見て工夫したのが伝わるよ」と伝えると、子どもは自分の努力や工夫に気づきやすくなります。

私が昔教員として働いていたときのことです。ある静かな昼休みの教室で、みんなが校庭に出ている中、一人の女の子が教科書を見ながら音読の練習をしていました。彼女はゆっくりと、何度もつまづきながらも、声に熱意がこもっていました。私はそっと見守り、休み時間が終わったあとに声をかけました。

まさこ先生
まさこ先生

 

さっき音読してたね。
誰も見ていないのに自分のペースで練習するの、
すごく勇気がいるよね。

え、聞こえてたの?

まさこ先生
まさこ先生

うん、すごくよくがんばってたね。
自分でやろうって決めたの?

みんなの前で読むのは怖いけれど、
うまくなりたくて頑張っているんだ!

まさこ先生
まさこ先生

誰も見ていないときに練習するって、
すごく勇気がいることだよ。
そういう努力って、本当に立派だと思う。

そのとき、彼女の頬がほんのり赤くなり、瞳がふるえているのに気づきました。

…うれしい。
見られてると思わなかったけど、
ちょっと…うれしかった。

私は彼女が小さく笑ったその瞬間を今でも忘れられません。彼女の行動そのものよりも、その“背景”にある気持ちを汲み取って声をかけたことで、彼女の中に「わかってもらえた」という安心感が生まれたようでした。

親の感動を伝える!やる気を引き出すほめ方

子どもが何か達成したとき、「うれしい」「感動した」という親の気持ちを素直に表現することで、子どもは「誰かのためになれた」という充実感を得ます。

夏休み明けの作品発表の日、男の子は少し緊張した面持ちで手作りの紙芝居を抱えて教室に入ってきました。発表が終わったあと、私は、

まさこ先生
まさこ先生

ねえ、君の紙芝居、
こんなに心が動いたのは久しぶりだよ。
本当にすてきだった!

と伝えてみました。彼は一瞬目を丸くして、それから少し照れたように笑いました。

ほんと?

まさこ先生
まさこ先生

うん、最後のページなんて、
ちょっと涙出そうだったくらい。
あの言葉、自分で考えたの?

うちのおばあちゃんが昔話してくれたお話をもとにして、
ちょっと変えてみたんだ。自分の言葉も入れてみた。

まさこ先生
まさこ先生

おばあちゃんの思い出と君のアイデアが混ざって、
すごくあたたかい紙芝居になったね。

私はその工夫に感心しながら、そう伝えると、彼は声を弾ませて言いました。

来年はもっと長いの作りたい!
動物のお話とか、自分で絵もぜんぶ描いてみたい!

大人が驚きや喜びを表現することで、子どもの中にその場面が鮮明に記憶され、「昔できなかったことが、こんなにできるようになったね!」という過去との比較は、達成感に感情的重みを加える効果があり、こうした記憶が学習意欲につながっていきます。

心の動きに寄り添う!共感で伸ばす自信

ある日のこと、小学1年生の男の子が嬉しそうな表情で走ってきました。

先生、見て!できたよ!

彼の手には、カタカナで書いた小さな詩が握られていました。字は少しばらばらで、完璧とは言えません。けれど、詩の中には彼の優しい気持ちがたっぷり込められていました。

これね、○○くんが泣いてたから、元気になってほしくて書いたんだ。

私はその詩をじっくり読み、ちょっと恥ずかしそうに話してくれた彼にこう伝えました。

まさこ先生
まさこ先生

泣いている友だちを思って書いたんだね。
とても素敵だよ。

うん、泣いてるときに笑ってほしかったんだ。

詩の出来栄えではなく、彼の心の動きや意図に目を向けてほめることが、その子の自信になるのです。こんなささやかなやりとりが積み重なって、子どもは自分の気持ちを大切にし、他者を思いやる心を育てていきます。

小さな発見を認めて学習意欲を育む

子どもは「自分の行動や関心が誰かに受け止められ、価値あるものとして認識された」と実感することで、自分自身の学びへの意欲が高まります。たとえば、石ころ集めに熱中する子どもが

まさこ先生
まさこ先生

形のちがいに気づいたんだね。

まさこ先生
まさこ先生

色に注目するって面白いね。

といった言葉をかけられたとき、その行為は“ただの遊び”から”自分らしい発見”へと意味づけられます。

このような関わりは、直接的に「勉強しよう」と言わずとも、子どもが自然に探究心を持ち、次に何を見つけられるかを楽しみにする姿勢へとつながっていき、“小さな承認”が積み重なることで、子ども自身が「学ぶ意味」を自分の中に育てていきます。

まさこ先生
まさこ先生

自分の感性や観察力が認められたという経験は、思考や表現への自信にも影響します。たとえばぼくの見つけたこと、ちゃんと伝わった」という感覚が、次の発言や創作の原動力となるのです。

小さな進歩を褒め、目標達成力を伸ばす

「昨日より時間を守れてるね」「自分で片づけができてすごいね」そんな、小さな変化を見つけて伝えることの大切さは計り知れません。

私が担当したある男の子の話です。彼は体育の縄跳びが苦手で、授業中に縄に足をかけてしまい、なかなか長く跳ぶことができませんでした。しかし、夏休み前のある日、彼は私にこっそり

夏休み中に少しでも縄跳びが上手になりたい!

と話してくれました。その後、毎日5分だけ家の庭で練習を続けたそうです。特別誰かに言われたわけでも記録をつけたわけでもなく、自分だけの小さな目標を胸に頑張っていました。

夏休み明けに再会した彼は、「先生、見て!」と言って自信げに縄を回し、10回も続けて跳ぶことができたのです。彼の表情は誇らしげで、

ぼく、変わったんだ!

とはっきりした声で語ってくれました。

まさこ先生
まさこ先生

昨日より少しできた」「自分でできた」と認識する経験が、子どもにとって大きな励みになり、やがて自己管理や目標達成への力を育てていくのです。

比較しない!「その子らしさ」を認めるほめ方

「妹より早くできたね」ではなく、「あなたの工夫にびっくりしたよ」「その考え方は君らしいね」と声をかけることで、子どもは他者評価ではなく自己評価に価値を見出します。

ある日の夕方、リビングの隅で、娘が音読の練習をしていました。息子は、学校でも音読が得意で、先生に褒められることが多い子でした。

だからこそ、娘は「私も上手に読まなきゃ」と、少し緊張した面持ちで教科書を握っていましたが、言葉に詰まりながらも、彼女は最後まで読み切りました。私はそっと隣に座り、声をかけました。

まさこ先生
まさこ先生

途中で止まりながらでも読めたね。すごく集中してた。

むすめ
むすめ

お兄ちゃんみたいにうまく読めないけど…最後まで読めてよかった。

娘は少しうつむいて、つぶやき、不安そうに私の顔を見ました。

むすめ
むすめ

私のペースでもいいの?

まさこ先生
まさこ先生

もちろん。自分のペースでがんばる姿、すごくいいと思うよ。

その後の宿題の時間、娘は静かにノートと向き合い、短いながらも自分の気持ちを綴った文章を見せてくれました。

むすめ
むすめ

うまく書けないけど、思ったことは書いた。

そう言いながら手渡してくれた紙には、素朴で温かい言葉が並んでいました。

まさこ先生
まさこ先生

自分の気持ちを言葉にしてくれて、
おかあさんすごくうれしい。

むすめ
むすめ

ほんとに?こんな短いのに?

まさこ先生
まさこ先生

うん。長さじゃないよ。
気持ちがちゃんと伝わってきたから。

そう言うと、彼女は安心したように顔をほころばせました。

むすめ
むすめ

なんか、自分のこと見てくれてるって感じ!

兄と比べるのではなく、娘自身の頑張りや気持ちに寄り添うことで、彼女の中に「わたしらしさ」が育っていくのを感じました。

まさこ先生
まさこ先生

比較ではなく、“その子らしさ”をまるごと認める言葉は、自信や安心につながります。これこそが、どの子にも居場所があるというメッセージになります。

失敗を恐れない!挑戦を支える声かけ

子どもが失敗したときは、大人がどれだけ寄り添えるかが大きな鍵となります。たとえうまくいかなくても、「最後までやりきったね」「途中で困っても自分で考えていたのがすごいね」と声をかけてみましょう。

一度、工作でなかなかうまくいかずに涙をこぼした男の子がいました。紙が破れたり、貼ったところが外れたりして、悔しさが彼の目に溢れていました。私はそばに寄り添い、

まさこ先生
まさこ先生

そんなに悔しがるってことは、一生懸命やってた証拠だね。

と話しました。すると彼は涙をぬぐい、次の日はまた新しい決意で作業に取りかかっていました。

まさこ先生
まさこ先生

失敗は子どもにとって苦しい経験ですが、そこで立ち止まらずに挑戦を続ける力をつけることも大切な「ほめる」役割です。

今日から実践できる!子どもの心に響く言葉の贈り方

夏休みは、子どもとしっかり向き合い、心の声に耳を傾ける絶好のチャンスです。ほめることは、単に「すごいね!」と言うだけでなく、その子の頑張りや気持ちを丁寧に受け止めることです。

そうやって認められた経験は、子どもの自信やる気、さらには自分らしさを育てる大切な土台になります

思い出してください。子どもが笑顔で話したあの言葉、真剣に取り組んだその姿。今年の夏は、ぜひ「あなたのここがすてきだよ」「頑張ったね」と、子どもに温かい言葉をかけてあげてください。

それが、何よりのプレゼントになるでしょう。

 

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