夏は子どもの活動量が増える分、家庭でアイスや甘い飲み物が習慣になりがちです。
ですが、“普段からジュースをよく飲んでいる”子は、夏明けに急に授業へ集中できなくなったり、イライラしたりすることが多いと、長年教員として現場に立っていて気づきました。
わが家でも試行錯誤がありました。最初の年は完全に禁止しようとして大喧嘩になり、結局、夫が隠れて買い置きしていて失敗したこともあります。
そこから学んだのは、「無理な制限ではなく、家族で納得できるルール作り」が大切だということでした。
ここでは教員視点と、コロナ以降の学校現場での変化も踏まえた、「うちでもできそう」な対策を紹介します。
筆者プロフィール
40年間、大都市近郊の小学校5校で約4000人の児童と向き合ってきた元小学校教諭。
教育相談担当として5年間、不登校や生活リズムの問題など年間約30件のケースに寄り添い、子どもと保護者の心に深く関わる。
PTA担当の3年間では、多くの保護者の悩みや喜びを共有。
夫も小学校教員という共働き家庭で2児を育てた経験から、「忙しい親だからこそできる子育て」を実践と教育現場の両面から伝える。
小学校教員目線で分かった「夏明けに集中が落ちる」子の生活共通点
長期休みが終わると、「朝からぼーっとしている」「ちょっとしたことで気分が大きく乱れる」子が一気に増えます。
実は“朝ご飯がジュースだけ”だったり、スポーツドリンクを多用する生活が日常になっている家庭ほど、その傾向が顕著。

先生、なんかだるい…。

今日、朝ごはん食べた?

ジュースだけ飲んできた…。

集中力の低下や感情の不安定は日々の食習慣と深く結びついています。
実際、休み時間ごとに友達とのトラブルを起こしやすかった子ほど、甘いものの摂取量が多い傾向が見られました。
こうした糖分の多い飲み物は一時的な満足感を与えますが、血糖値がまるでジェットコースターのような急激な変化をもたらし、子どもの体にも心にも負担が大きいもの。
親は、もっと子どもの飲み物に関心を持つ必要があります。

コロナ以降、学校給食では黙食が長く続き、子どもたちが「味覚中心の満足」を求めやすい傾向が強まったと感じます。
給食の前に甘い物を大量に摂ってお腹が空かず、残食が増える子もいます。
- 清涼飲料水やジュースのペットボトル1本に含まれる糖分=角砂糖10個以上
- 小学生の1日の糖質摂取目安(厚生労働省の食事摂取基準による)は200〜300g程度

つまり清涼飲料水1本だけで50g以上、1日の約2割を占めることになります!
※急激な血糖値の上昇と下降は、脳へのエネルギー供給を不安定にし、集中力低下や衝動性の増加につながることが、栄養学・小児科学の分野で指摘されています。
家庭でできる!摂りすぎを防ぐ5つの工夫
“おやつタイム”を決めて自然にコントロール
「いつでもOK」ではなく「15時はおやつタイム」と決めるだけで、子ども自身が行動ペースをつかみやすくなります。

ホワイトボードに書いた15:00おやつタイムの文字
ホワイドボードに1日の流れを書いて、「今は水分補給の時間」「次が自由あそび」などスケジュールを見える化。
すると、だらだら間食や甘い飲料への欲求も少しずつ落ち着くようになりました。
子どもと一緒に「今日のスケジュール」を作り、食のリズムを整えていく。
そうした日々の工夫が、心と体の健やかさにつながっていきます。

休み時間と授業の切り替えがスムーズなクラスほど、子どもたちが落ち着いています。
チャイムが鳴る前に次の準備を始める、時計を見て行動する、時間を管理する習慣の積み重ねが、クラス全体を穏やかにしていくのです。
“冷たいもの=ジュース”の習慣をゆるやかに変える
ジュースをやめることに成功した最大の理由は、毎朝子ども用の小さなボトルを一緒に準備し、「自分の今日の水分を自分で選んで作る」習慣を取り入れたことです。
専用のマイボトルを用意すると、自分で注ぐ達成感も得られ、「自分の飲み物」という意識が芽生えます。
氷と薄切りのレモン・オレンジなどを入れた“フルーツウォーター”は、見た目も香りも楽しいため、無理なく続けられます。

筆者が作ったレモンと氷が入った飲み物
衛生面にも気を配り、大きな容器で作り置きせず「少量を毎日作る」スタイルにしました。

わが家では朝に500mlを作り、1日分として使い切ります。
大量に作って何日も置いておくより、新鮮で安心です。
麦茶を安全に保つポイント
- 沸かした麦茶は冷ましてから冷蔵保存し、24時間以内に飲み切る
- 水出し麦茶も清潔な容器を使い、毎日作り替える
- 水筒は毎日熱めのお湯で洗い、飲み口やフタの溝はブラシでしっかり洗って乾燥させる
- 怪しい匂いや濁りがあれば、迷わず捨てる

コロナ以降、学校では「水筒は麦茶か水に」と統一されている地域が多くなりました。
家庭でも、ジュース中心にせず麦茶や水を主にするのが現実的です。
砂糖を“見える化”して気づきを育てる
家で簡単にできる自由研究としておすすめなのが、「飲み物に入っている砂糖を調べる」実験。
ペットボトルの成分表示を確認し、100mlあたりの糖分量を調べて、実際に角砂糖を並べる。(たとえば500mlのペットボトルに糖分が50g含まれていれば、角砂糖(1個約3〜4g)なら12〜17個分)
教員時代にも、この活動を授業で行いましたが、児童はとても驚きます。

500mlのペットボトルのジュースに含まれる糖分を換算した16個の角砂糖

えっ、こんなに入ってるの!?
家庭で親子一緒に体験すると、「ジュースは飲んじゃダメ」という押しつけではなく、子ども自身の“気づき”として残ります。

すごくたくさん入ってるんだね!

冷たいと感じないけど、ぬるくなると甘く感じるよね。

紅茶に入れる角砂糖は1つくらいだもんね。

数の学習や比較の学びにもつながり、自発的に飲む量を考えるきっかけになります。
手作りアイスは「量・材料・甘さ」を教える夏の実験教材
親子で手作りする楽しさを取り入れると、子どもの満足度も食への関心も高くなります。
わが家では、ヨーグルトに凍らせたフルーツと少しのはちみつを混ぜて、冷凍庫で数時間冷やすだけのアイスを作りました。
家で作ると「量・材料・甘さ」をコントロールできるのが最大の利点です。

甘さを自分で調整する経験は食に対する主体性を育てます。
子どもと一緒に計量スプーンを使って分量を量れば、算数の要素も加わります。

大さじ1は何ml?

15mlだよね。

2倍にすると?

30ml!

熟れすぎたバナナやキウイをそのまま凍らすアイスバーも、お手軽でおすすめです!カットして器ごと凍らす方法も楽ちんです。

筆者がよく作るフルーツをカットして器ごと凍らせたおやつ
おやつ作りは、単なる間食ではなく、学びと成長の場になるのです。

「手を動かす学び」は自己肯定感を高める効果があります。
「自分で作った」という達成感が、子どもの表情を変えるのです。
“買い置きルール”で自己コントロールを育てる
「冷凍庫に常にある」状態は、ついつい食べてしまう習慣化の原因に。
そこで、わが家では週末にだけ「アイス2本までOK」という買い置きルールを設定しました。

疲れているときは、冷凍庫にストックがあると正直、楽。
「食べていいよ」と言えば、子どもも満足するし、私も余計なやりとりをせずに済む。
でもそれが続くと、際限なくなってしまう。だからこそ、「2本まで」という線引きが必要でした。
子どもに「どの味を選ぶ?」「いつ食べる?」と相談することで、選択する力と計画性を育てる機会になります。

いつ食べる?

土曜日の午後と日曜日のお昼に食べる!

チョコ味とイチゴ味にする!
家でも「食べる量を自分で考える」練習のチャンスとして、こうしたルール作りは学びとつながっていくのです。

コロナ禍で自分の持ち物を自己管理する力が育った今、「自分の食べるもの」も自分で管理する力をつけさせるのが、元教員としてのおすすめです。
学校現場で実感:子どもたちの食事に向かう変化
最近は、栄養バランスを保ちながら季節の果物やデザートを工夫して提供する給食が増えています。
家庭でも栄養面を考慮して、食事の中に冷たいものを1品取り入れるなど、バランスを考える習慣をつけるとよいでしょう。
また、コロナ禍以前のように、わいわいとにぎやかに給食を食べるのではなく、自分のペースで食べ、食材の味を感じ取る「一人で静かに味わう」子が多いと感じています。
一方で会話の機会が減ったことから、「食事の楽しさ」を家庭で補うことが不可欠になっています。

夏休みこそ、食べる時間・内容・量を整え、体と心をリセットする良い機会です。
家庭での小さな工夫が、休み明けの落ち着きにもつながっていきます。
親の声かけで変わる!禁止ではなく“共感と工夫”で導く
「だめ」「我慢して」では続きません。教員としても、行動変容には「共感と選択肢」が大切だと感じてきました。
家庭で規則正しい食事と適切な間食のルールを作ることは、情緒面の安定につながり、その結果として学習に向かう力が高まります。
禁止するよりも共感と選択肢を与えることが続けやすさの秘訣です。

今日は暑かったね。アイス食べたい?

うん!

今日はお手伝いしたごほうびに、手作りヨーグルトアイスにしようか!
子どもが納得して選ぶと、満足感が高くなります。
もし子どもが駄々をこねた時は、こんな切り返しも効果的です。

じゃあ、今日はジュースじゃなくて、この冷たいフルーツウォーターと、アイスの代わりに小さいゼリーにしない?
「アイスはダメ」では反発を招きますが、理由と代替案を示すと子どもは納得します。
また親自身が冷たい飲み物をほどほどにする姿を見せることも大切です。
行動のモデルとなることで子どもは自然に学びます。

「冷たいものを楽しむ=悪」ではなく、「自分で上手に選ぶ力」を育てる意識を持ちましょう。
わが家のルーティン
- 朝:水分は常温の水か冷やした麦茶を用意。水筒は朝に満タンにして出かける
- 午前中:遊びで汗をかいたらまず水で一度口を潤す
- 午後15時:おやつタイム。手作りフルーツアイスやヨーグルトバーを用意。市販のジュースはこの時間だけに限定
- 夕方:外遊び後は麦茶。夜は糖分を控えて就寝リズムを整える
- 買い物ルール:週末に家族でアイスの本数を決める。冷凍庫に見える札を貼って残数を管理
おわりに:家庭でできる“夏の健康教育”
アイスやジュースを減らす工夫は、健康だけでなく「生きる力」を育てる教育でもあります。
夏の暑さの中で冷たいものは子どもにとっての楽しみです。
重要なのは「完全な禁止」ではなく「上手に付き合う力」を育てることです。
コロナ以降の学校では「自分の体を自分で守る力」を重視しています。
手洗い、マスクの管理、体調の自己観察など、子どもたち自身が健康を意識する場面が増えました。
そして、こうした学びを支えるのが日々の家庭での習慣づくりなのです。
元教員・母としての実感は、「食べることを通して、子どもは自分を大切にする力を学ぶ」ということです。
まずはできることを一つから始めてみてください。
もし迷ったら、まずは『おやつタイムを15時に固定する』、または『冷蔵庫からジュースを1種類だけ減らす』ことから試してみませんか?
小さな一歩が、2学期の大きな変化につながります。
無理なく、楽しく、家庭でできる範囲から。親子で話し合いながらルールを作ること自体が大きな学びになります。
暑い夏を、元気にそして賢く乗り切りましょう。
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