夏休みは、子どもの自己管理能力が試される時期です。
特にスマホやゲーム、宿題との向き合い方について、親子でぶつかることも少なくありません。
私自身も子育て中はこの問題に頭を悩ませてきました。
試行錯誤の末たどりついたのは、”見える化”と親子の対話によるスマホルール作りでした。
崩れがちな生活リズムやスマホ・ゲームの使い方は、ちょっとした工夫で整えることができます。
大切なのは「子どもが自分でやってみたい」と思えるような仕掛けを作り、親自身も一緒に取り組むことだったのです。
この記事では、子どものスマホやゲーム、宿題への向き合い方に悩む親子の信頼関係を深めながら、子どものやる気と自己管理能力を引き出すヒントをお伝えします。
自分の家庭での実体験だけでなく、学校現場での取り組みもご紹介します。
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- 40年間、大都市近郊の小学校5校で約4000人の児童と向き合ってきた元小学校教諭。
 - 教育相談担当として5年間、不登校や生活リズムの問題など年間約30件のケースに寄り添い、子どもと保護者の心に深く関わる。
 - PTA担当の3年間では、多くの保護者の悩みや喜びを共有。
 - 夫も小学校教員という共働き家庭で2児を育てた経験から、「忙しい親だからこそできる子育て」を実践と教育現場の両面から伝える。
 
崩れは「事前準備」で防ぐ!家族の対話と親の行動の重要性
夏休みにリズムが崩れるのは、単に「学校が休みだから」だけではありません。
例えば息子の場合、夜に家族で映画を見始めると「もうちょっと!あと10分!」と寝る時間がズレ込み、翌朝はぐったり。
さらに、夫が夜型の生活をしていた頃は、子どももそれを理由に抵抗。毎晩寝かしつけに苦労しました。

おとうさんがまだ起きてるから僕も寝たくない。

夏休みだからゆっくりしたかったんだけど…。
また、タブレットやゲームの存在も大きな要因です。
ある夜、娘が布団でゴロゴロしていたので覗くと、直前まで動画を見ていたことが判明。ブルーライトで脳が興奮していたようです。


だから言わんこっちゃない…。

生活リズムの乱れは、自律神経の乱れにつながり、2学期からの不登校の原因にもなり得ます。
夏休みに入る前に「家族会議」を開き、「2学期の生活リズム」を意識した就寝・起床時間を親子で書き出し、目につく場所に貼っておきましょう。
「事前準備」こそが自己管理能力を育む第一歩です。
自主性を育てる鍵!早寝早起きと学習の「見える化」実践術
子どもは「今は何をすべきか」が分かると、安心して行動できます。
自分から早起きや学習に取り組むようにするには「見える化」が効果的です。
早起きは「チャレンジ表」で達成感を育むと叶う
わが家では、「早起きチャレンジ表」を冷蔵庫に貼り、起きられた日は好きなシールを貼るルールにしました。
きょうだいでシール枚数を競うと、朝の雰囲気まで明るくなるなど、思わぬ効果もありました。

早起きチャレンジ表に兄妹がシールを貼った例
娘の挑戦!自分で起きる達成感
娘は小学4年生の時、目覚まし時計を自分でセットするようになり、達成感から毎朝嬉しそうに報告してくれました。

今日は自分でできたよ!

えらいね!がんばったね!
さらに「1週間達成したら好きな絵本を一冊選べる」というごほうびを用意したところ、いっそう張り切って取り組むようになりました。

「自己決定感」は自主性の源です。
親が「何時に起きなさい」と言うのではなく、「早起きチャレンジの景品は何にしようか」とごほうびを子どもに決めさせるところから始めましょう。
自分で選んだルールだからこそ、継続する意欲と自己効力感が育ちます。
息子の挑戦!ラジオ体操で自信を育む
息子は「自分で起きられたら、朝のラジオ体操に行く」と決めてから、前日夜に自分で目覚ましをセットするようになりました。
出席するとスタンプがもらえて、係のおじさんに声をかけられるのがといわれるのがとてもうれしかったようで、夏休み最終日にはお友達とスタンプカードを見せ合って、誇らしげな顔をしてました。

今日もがんばったな。スタンプだいぶんたまったな!

はい!あともう少しなので最後までがんばります!

いいなぁ。僕、途中休んじゃったんだよね。

早寝早起きを親が一方的に押しつけるのではなく、子ども自身が「やってみたい」と思えるような仕掛けを用意することが大切です。
学習の取り組みはタイムスケジュールの「見える化」が効果的
息子に「ゲームばかりしないで!」と言っても、ケンカになるばかりでした。
そこでリビングにホワイトボードを置き、1日の流れを絵と文字で簡単に書き出すことにしました。
「朝は宿題」「昼は自由時間」「夕方は散歩」とシンプルに区切り、横にマグネットやキャラクターのシールを貼れるようにすると、息子は自分から動きました。
ある日、ゲームに夢中なときに私が声をかけると、本人が自分で気づき机に向かったのです。

今は何の時間だっけ?

あっ!宿題の時間だった!
強制で止めさせるよりも、“時間を見えるようにする”ことで自然と切り替えやすくなると実感しました。

「時間を見える化」することは、子どもが「次の行動」を予測するための構造化された環境づくりです。
リビングのホワイトボードに「やること・やめること」を絵やマグネットで示し、親は「時間が来たら次のマグネットを動かす」という「進行役」に徹しましょう。
親が命令する機会が減り、親子関係も改善します。
自己管理能力を育む!スマホルールは「親子の対話」でつくる
スマホの長時間使用は生活リズムを崩す原因になりがちで、どこのご家庭でも頭の痛い問題です。
逆に言うと、ここを抑えることで子どもの自己管理能力が高まります。
「ただ制限」ではなく「一緒に考える」
「ルールは親が押しつけるもの」ではなく「一緒に育てていくもの」と思っています。
わが家が話し合いの末、考え出したのが次の3つ。
わが家のスマホルール
- 夜9時以降は充電器のあるリビングにスマホを置く
 - 家族で食事中は机の上にスマホを出さない
 - 使いすぎた次の日は控えめに過ごす
 
ポイントは「親が決める」のではなく「子が提案したものを取り入れる」こと。
わが家の場合は子どもたちが「食事中はやめよう」と言い出したため、納得して守れるようになりました。
守れない日もありましたが、「なぜそうなった?」を一緒に振り返る時間が、何より貴重でした。
教員時代、保護者の方から相談されたことがありました。

ルールを守らせるのがつらいです。

ルールは“育てるもの”ですよ。

一緒に考えるようになって、子どもが自分から工夫するようになりました。
「見せる背中」が言葉以上のメッセージになる
教室で、子どもたちに親のスマホ利用について尋ねたことがあります。

おうちの人はスマホをいつ見てる?

ずっと見てる!

ごはんのときも見てる!

じゃあ、家族でスマホを置いて遊ぶ時間を作ってみよう!
と提案すると、「昨日は一緒に折り紙した!」と嬉しそうに報告してくれる子もいました。
私自身も娘に「スマホばかり見ないで!」と注意した直後、自分がSNSをひたすらスクロールしていることに気づいてハッとしたことがあります。
その時の娘の冷たい視線に反省し、わが家では夕食後30分は“全員ノースマホタイム”と決めました。
その間はトランプやカードゲーム、時には日中の出来事を語り合うだけ。
不思議なことに、私自身も「画面を見ない時間」が気持ちの切り替えになり、子どもからは「おかあさんも一緒に遊んでる感じがしてうれしい」と言われました。
“見せる背中”は、言葉以上に強いメッセージになるのだと思います。
兄弟でスマホルールが違ってもOK
兄弟姉妹がいる家庭では、スマホの使い方に関するルールをどう分けるかが大きな課題になります。
私の家庭でも、兄が中学校に上がったタイミングでスマホルールを見直しました。
妹には「1日30分まで」「使うときはリビングで」「使った後は一緒に内容を振り返る」といった見守り型のルールを。
兄には「1日1時間まで」「自分で時間管理をする」「週末に使い方を振り返る」といった自己管理型のルールを設定しました。
もちろん、きょうだい間で「不公平」と感じさせないように、理由を伝えることが必要です。

お兄ちゃんばっかりずるい!

お兄ちゃんは中学生で、学校の調べ学習もあるからね。
でも、○○ちゃんも大きくなったら同じように使えるよ。
そして、娘がスマホを使った後に「こんな動画見たよ」と話してくれたときは、「面白そうだね!今度一緒に見てみようか」と声をかけることで、使い方そのものを肯定的に受け止めるようにしました。

成長段階に応じたルールの違いは、公正性を伝えるチャンスです。「お兄ちゃんは〇〇ができるようになったから、自己責任のルールを適用している」と、成長を理由にルールを設定していることを明確に伝えましょう。
発達段階に応じた適切な期待は、子どもの自己肯定感を育みます。
「うちのルールはこうだから」ではなく、「あなたに合ったルールを一緒に考えよう」という姿勢が、家庭の中に安心感を育ててくれるのです。
この「自分で決めたルールを守る力」や「時間を意識する力」は、そのままグローバルな活動に役立ちます。自主的にPCやタブレットを使うオンライン国際交流は、国内の生活リズムが整っているお子さんほど、成功率が高まります。

【元教員が語る】学校との連携で自主性と自己肯定感を育てる
夏休みの保護者面談は、夏休み前までと夏休み中の子どもの様子を、学校とご家庭が情報共有する貴重な機会です。
学校の先生と悩みを共有することで気持ちが軽くなる
面談の際に保護者の方からスマホについて相談されたことがあります。

スマホの使い方が気になっていて…。

学校でも使い方を意識するように声かけしてみますね。

どうしたらよいか悩んでいたので助かります。
家庭だけで悩まず、学校とつながることで得られる安心感は大きなものです。
学校の先生との対話は、親にとっても「一人で抱え込まなくていいんだ」と感じられる支えになります。

担任の先生は「チーム」の一員です。
「夏休み中に生活リズムが乱れがちなので、親としてできる工夫があれば教えてください」と謙虚に相談し、家庭と学校が同じ方向を向いて見守る体制を作りましょう。
両者の視点を持つことで、問題の早期発見にもつながります。
教育現場の視点を活かす
ある学校に勤務していた時、「家庭でのスマホルールを共有するアンケート」を実施し、保護者と先生が情報を交換する場を設けたことがあります。
その結果を受けて、授業中に話題にすると、子どもたちが自分の家のルールについて自然に話し始めたのです。

スマホの使い方、みんなはどうしてる?

うちは特に決まってない!

うちはご飯の時は触っちゃダメってルール。

子どもたちの間でルールが「話題」になることが、規範意識を高めます。
親は「うちのルールはこうだよ」と堂々と家庭のルールを親同士や学校との間で共有しましょう。
周囲の規範に触れることで、子どもは自分の行動を客観視し始めます。
教育現場の視点を活かしながら、家庭と学校が協力して子どものスマホとの付き合い方を育てていく。
それこそが、現代の子育てにおいて欠かせないアプローチだと感じています。
まとめ:子どもの自主性は「チーム戦」で育もう
夏休みに崩れがちな生活リズムやスマホ・ゲームの使い方は、ちょっとした工夫で整えることができます。
大切なのは「子どもが自分でやってみたい」と思えるような仕掛けを作り、親自身も一緒に取り組むことです。
また夏休みは、「チーム戦」として課題に取り組む絶好の機会です。
学校と連携することでわが子について新しい気づきを得ることができ、親自身の負担感も軽くなります。
早寝早起きの習慣づけやスマホルールの見直しも、単なる制限ではなく親子のコミュニケーションを深めるチャンスととらえてみましょう。
子どもと一緒にルールを作り、時には話し合いながら修正していく過程で、親も子どもも互いの気持ちを理解できるようになります。
小さな工夫と対話の積み重ねが、子どもの自主性と自己管理能力を育み、家族の絆をより一層深めてくれるでしょう。
スマホ利用を”社会を生き抜くスキル”ととらえるための考え方と実践方法についてはこちらの記事で詳しく述べています。

  
  
  
  

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