「なんでこれ買えないの?」「お金ってどうやって手に入れるの?」――わが家でも、当時小学生だった娘からこんな質問が飛び出したことがよくありました。いつもは「また今度ね」で流してしまう会話も、夏休みのようなまとまった時間があると、じっくり向き合うチャンスになります。
そんなときに始めたのが、家の中で楽しめる“子ども店長ごっこ”。家のリビングを即席のお店にして、商品選びから値段設定、販売や接客まで全部子どもに任せるこの遊びは、一見するとただのごっこ遊び。
でも実際は、想像以上に「考える力」や「やり切る力」が育つんです。最初は恥ずかしそうだった娘も、気が付けば本気の顔で「開店準備中」の札を作り、ポップを書き込み、私を呼び込み始めていました。
この記事では、家庭で気軽に取り入れられる「子ども店長」体験の進め方と、実際にやってみた感想、さらに応用アイデアまで詳しくご紹介します。
「子ども店長」ごっこが学びにつながる理由
小さな子どもにとって「お金」はまだ遠い存在。お菓子やおもちゃを買うときに親が使うもの、という程度の理解しかありません。でも、いざ自分が店長役になり「これ、いくらにしよう?」と決める立場になると、急にお金が“自分の判断で動くもの”に変わります。
娘は

これは作るのに30分かかったから高め。これは簡単だから安い方がいいかな。
と、自分なりの基準を持ち始めました。さらに、商品の値付けが高すぎて私が

ちょっと迷うな~。
と言うと、

じゃあセット割にします!
と即座に対応。こうしたやりとりが、交渉力や相手目線の発想を育ててくれます。

金銭感覚は学校の授業ではなかなか教えられません。でも、”子ども店長ごっこ”を通じて、「無駄遣いをしない力」や「計画的に使う力」の基礎が根付いていきます。
準備は簡単!家庭でできる「子ども店長」ごっこの始め方
「子ども店長」ごっこは、特別な道具や広いスペースがなくても、家庭のリビングやダイニングで気軽に始められる遊びです。準備はシンプルながら、子どもの創造力や社会性を引き出す仕掛けがたくさん詰まっています。
ここでは、実践的なステップを順を追ってご紹介します。
商品を決める
最初のステップは、店に並べる商品選び。わが家では、娘と一緒に部屋を回りながら「これは売る?」「見本だけにする?」と相談しました。折り紙で作ったネックレス、紙コップのペン立て、昔集めたシール帳など、「これ、売れるかな?」と目を輝かせながら品物を選んでいきます。途中、

これを売ったらもう遊べなくなるもん。
と悩む場面もあり、物に対する思い入れや“手放す勇気”まで学んでいるように感じました。

商品が足りないときは、折り紙や工作でオリジナル商品を作る時間を設けると、創造力がぐんと広がります。
保護者は「これは人気が出そうだね」「お客さんが喜びそう!」と肯定的な声かけをしながら、子どもの選択を尊重しましょう。
価格を決める
値段づけの時間は、娘が最も真剣になった瞬間でした。「このペン立ては500円!だって特別にデコレーションしたから」など、自分のこだわりを金額に反映します。
私はあえて「500円だと私、お財布がちょっと厳しいかも」と伝えてみると、「じゃあ400円でどうですか?」と即値下げ交渉がスタート。

500円だと私、お財布がちょっと厳しいかも。

じゃあ400円でどうですか?
こうして、物の価値・市場感覚・交渉術がすべて遊びの中で体験できました。

画用紙や付箋に金額を書いて商品に貼ると、視覚的にもわかりやすくなりますよ。
保護者は「その値段だと買ってもらえるかな?」「ちょっと安すぎるかも?」とやさしく問いかけながら、価格のバランス感覚を育てるサポートをしましょう。
最終的な判断は子どもに任せることで、自信と責任感が育ちます。
お金を準備する
売買を成立させるには、通貨の準備が必要です。このステップでは、金銭の流れや計算の仕組みを遊びの中で体験できます。紙に数字を書いて手作りのお金を作るだけでも十分ですし、100円ショップで購入できるおもちゃのお金セットを使えば、よりリアルな雰囲気が出ます。
おはじきやボタンを「1個=100円」として代用するのも面白い方法です。実際のやりとりが始まると、「おつりってどうやって出すの?」「100円玉が足りない!」といった疑問が自然と生まれます。
保護者は「500円払って300円の商品を買ったら、おつりはいくら?」と一緒に考えたり、「おつりが足りないときはどうする?」と対応力を育てる声かけをしてみましょう。
わが家では、お金は厚紙に数字を書いて自作しました。市販のおもちゃ通貨もありますが、作る工程も学びになるのでおすすめです。

おつりが足りなくなった!
と焦る娘と一緒に、家中のボタンやおはじきを“特別通貨”に見立てて対応。こうした“トラブルも自分で解決する経験”は、学校の授業よりも強く記憶に残るようです。
計算が難しい場合は、指や電卓を使ってもOKです。
お客さんになってみる
いよいよ開店!私はわざと「今日はどんな特売があるんですか?」と聞いてみたり、「あっちのお店はもっと安かったよ」と値切ってみたり。すると娘は慌てるどころか、

ではポイントカード作ります!
と新サービスを即、発案。
ペンで手描きポイントカードを作成し、5ポイント貯まると“秘密のおまけ”がもらえる仕組みまで整えていました。「ちょっと高いな…」「他のお店も見てみようかな」とリアルな反応を演じることで、子どもは「じゃあ割引します!」と交渉を始めるかもしれません。
保護者は「店長さん、丁寧な対応ですね」「説明がとても分かりやすかったよ」と具体的に褒めることで、子どもの自信につながります。時には「困ったお客さん」役を演じて、対応力を試すのも良い刺激になります。
【体験談】店長になった娘が得た“気づき”と“成長”

売るものがないよ〜。
と困り顔だった娘でしたが、部屋を見回すうちに目がキラキラ。「自分で作った折り紙アクセサリー」「使ってないシール帳」を次々発見し、あっという間に店らしい雰囲気が完成です。

これは100円かな?でもこっちはキラキラしてるから300円だよ!
娘は見た目や制作時間を真剣に考慮中。私が

300円はちょっと高いかも…。

じゃあセットで500円にする!
この瞬発力と交渉センス、恐れ入りました。
そして娘が最も輝いたのが”売れ残りセール”企画。夕方になると

今日で閉店で〜す!
と大声で宣言し、カラフルな手作りポップを並べておすすめ商品を熱烈アピール。その姿はまさに天性の営業マンでした。
次回は「お菓子屋さん」バージョンにチャレンジ。手作りクッキーを丁寧に袋詰めして販売したところ、「食べ物は早く売らなきゃダメになっちゃう!」と、現実的な商売の知恵まで獲得していました。

この一連の体験を通して、娘は自然に学んでいったのです。「お金は考えて使うもの」「人に伝えるって楽しい!」「工夫すれば売れる」という感覚を。遊びの中で得た気づきは、単なる知識ではなく実感を伴った体験的な学びでした。
遊びが終わると、娘は満面の笑みで言いました。

店長って大変だけど楽しいね。
その言葉に込められた達成感と満足感。親としても最高に嬉しい瞬間でした。

こうした“考える力”や“伝える力”は、学校生活や友達との関わりにも良い影響を与えていると感じます。
応用編:遊びから広がる“お金の感覚”の育て方
「子ども店長」ごっこをきっかけに、子どもの学びをさらに深める工夫も可能です。ここでは、家庭で取り入れやすく、かつ教育的な効果が高い応用アイデアを3つご紹介します。
ポイントカード制度
たとえば「買い物をするとスタンプが1つ」「5個集まったら特典がもらえる」といった仕組みを導入すると、子どもは“お客さんにもう一度来てもらうにはどうしたらいいか”という視点を持ち始めます。
この仕組みは、継続的な関係づくりやサービス精神を育てるきっかけになります。カードのデザインを考えたり、特典内容を工夫したりすることで、創造力や計画性も自然と伸びていきます。
チラシづくり
「おすすめ商品はこちら!」「今だけ割引中!」などの情報を紙にまとめて配ることで、子どもは“伝える力”と“書く力”の両方を育てることができます。
手書きのチラシは、色使いやレイアウトを工夫する楽しさもあり、表現力を伸ばす絶好の機会です。家族に配ったり、部屋に貼ったりすることで、宣伝の面白さや反応の違いを体験できます。
「どうしたら目に留まるかな?」「どんな言葉なら買いたくなるかな?」と考えることで、マーケティング的な視点も自然と育まれます。
原価と利益の考え方を取り入れる
「このシールは100円で買ったから、150円で売ると50円のもうけになるね」といった会話を通じて、簡単な商売の仕組みを伝えることができます。
「利益ってなに?」「損するってどういうこと?」という疑問が出てきたら、無理なく経済の基本に触れるチャンスです。
数字だけでなく、「どうしてその値段にしたのか」「売れたときの気持ち」など、感情や背景も一緒に話すことで、理解がより深まります。
まとめ|遊びの中にこそ、本物の学びがある
子ども店長ごっこは、遊びながら考える力・伝える力・人と関わる力を学べる最高の家庭教育ツールです。
親子で過ごす時間が増える長期休みにはぜひ挑戦してみてください。
ゲームのように楽しく、でも終わったあとには確かな成長が残ります。
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