感情を言葉にできる子に育てる!~家庭でできる4つの遊びと実践ヒント~

親子コミュニケーション術

子どもが自分の気持ちをうまく言葉で表すことができると、心が軽くなり、人とのやり取りも前向きになります。日常の中で、「なんとなくモヤモヤする」「今日は楽しかった」などと気持ちを共有できる習慣は、親子の信頼関係を深めるうえでも大切です。

今回は、私自身が家庭で実践して効果を感じた4つの感情表現あそびと、その応用アイデアをご紹介します。

ちょっとした遊びが、将来のコミュニケーション能力や人間関係の土台になる――そんな親子の時間を一緒に作ってみませんか。

感情表現を豊かにする遊び4選

 感情カード遊び:感情を「見える化」して心の内側を育てる

感情カードは、「うれしい」「悲しい」「びっくりした」などの感情を絵と文字で表したカードです。

わが家では、夕食後の10分間を「こころタイム」と名づけ、家族全員でその日に感じた気持ちをカードから選び出します。息子が1年生の頃、「給食をおかわりできたからうれしい!」と笑顔でカードを出してくれたのがきっかけで習慣になりました。

ある晩、いつもは元気な彼が、

むすこ
むすこ

今日は悔しかった。

とカードを静かに差し出したことがありました。理由をたずねると、「図工で思うように作れなかった」とこぼしました。そのとき、私も

まさこ先生
まさこ先生

おかあさんも、今日は仕事でちょっと落ち込んだ。

と打ち明けると、彼が“もやもやカード”を私に手渡し、「じゃあ、直す方法を考えよっか」と笑ってくれたのです。

この遊びは、感情を見える化するだけでなく、親子でお互いの心を知り、支え合う時間を作ってくれます。

まさこ先生
まさこ先生

ポイントは、子どもが選んだ感情を否定せず、「そうだったんだねとまず受け止めることです。言葉と表情がリンクしたカードを使うことで、子どもは自分の気持ちに意識を向け、言葉で表現するための足がかりを得ます。

ロールプレイ(ごっこ遊び):感情のやり取りを経験する場

 

ごっこ遊びは、感情教育の宝庫です。店員さんやお医者さんなど、役割になりきって会話をすることで、自然に相手の気持ちを想像する力が育ちます。

ある雨の日、外出できず退屈していた娘が、

むすめ
むすめ

お店屋さんやりたい!

と言い出したことがありました。私が

まさこ先生
まさこ先生

どんな商品を売るの?。

と聞くと、娘は「甘くておすすめのりんごです!」と元気に答え、私に試食をすすめる仕草までしてくれました。

別の日には、「病院ごっこ」でくまのぬいぐるみを診察。

むすめ
むすめ

くまちゃん、体調どうですか?

と真顔で聞き、「早く元気になりますように」と頭をなでていました。

こうしたやり取りの中で、「相手が困っていたらどう助ける?」「嬉しかったらどんな言葉をかける?」といった感情のやりとりが、遊びの延長で自然に学べます。

まさこ先生
まさこ先生

親も一緒に参加することで、子どもの表現がさらに豊かになるのを実感できます。

 絵本の感情リレー:語彙力と共感力を育てる

絵本の読み聞かせは、子どもの感情と言葉のセンスを同時に育てる最良の時間です。読むだけでなく、「この子はどんな気持ち?」と問いかけることで、物語の奥にある心の動きに気づかせることができます。

ある夜、息子と一緒に読んだ『おこだでませんように』という絵本で、主人公が短冊に願いを書く場面がありました。息子は小さな声で

むすこ
むすこ

この子、きっと悲しい気持ちだと思う。

とつぶやき、その理由を「いっぱい怒られると心がしょんぼりするから」と説明してくれました。この一言に、登場人物と自分を重ねる共感力が静かに育っているのを感じました。

まさこ先生
まさこ先生

絵本は物語の中でさまざまな感情を体験できる小さな舞台です。日替わりでいろいろな作品に触れ、親子でその日の“感情リレー”を楽しみましょう

 感情ジェスチャーしりとり:家庭を感情の共有空間に

「感情ジェスチャーしりとり」は、言葉遊びと身体表現を組み合わせた楽しいアクティビティです。たとえば、「らくだ」までしりとりが続いたら、「眠いらくだ」「怒ってるらくだ」など感情をつけてジェスチャーで表します。

娘が「さびしいらくだ」と言って小さく丸まった姿に、思わず笑ってしまったことがあります。しかも

むすめ
むすめ

怒ってるらくだはね、友達に笑われたときの気持ち。

と教えてくれたのです。
こうして遊びながら、普段は隠れていた気持ちが顔を出す瞬間があります。

まさこ先生
まさこ先生

体を使うことで、言葉以上に感情が伝わることも多く、親子の距離が自然に縮まります。

感情教育は進化する!子どもの成長に合わせた関わり方

「感情を言葉にする遊び」は、幼い子どもたちにとって心を開く大切な時間です。しかし、成長するにつれて子どもの心はより複雑になり、親子のコミュニケーションも変化していきます。今回は、小学生という年代に焦点を当て、子どもの成長段階に合わせた感情教育のヒントをご紹介します。

低学年(1〜2年生):遊びの中で「感情の地図」を作る

この時期の子どもたちは、まだ自分の気持ちをうまく言葉にできないことがあります。しかし、想像力が豊かで、遊びを通して学ぶことが大好きです。

「感情カード」の進化版

感情カード遊びは、感情を「見える化」するのに最適です。低学年向けには、カードの種類を増やし、より具体的な状況を想定したカード(例:「友達におもちゃを貸してもらえなかったとき」「テストでいい点が取れたとき」)を加えることで、感情を出来事と結びつける練習になります。

ロールプレイの応用

単なる「ごっこ遊び」から一歩進んで、「もし〇〇だったら、どんな気持ち?」と問いかけることで、想像力と共感力を同時に育みます。たとえば、「もしあなたがこの絵本の主人公だったら、どんな気持ち?」といった問いかけは、物語への没入感を深め、登場人物の感情を深く理解するきっかけになります。

中学年(3〜4年生):心の変化に寄り添う「聞く力」を育てる

この時期になると、子どもたちの世界は一気に広がり、感情もより複雑になります。友達との関係や学業での悩みなど、親には見えない葛藤を抱え始めることも少なくありません。

「気持ちノート」をツールとして活用

言葉で話すのが少し恥ずかしくなる時期です。そんなとき、「気持ちノート」は有効なツールになります。日記のように毎日書くのではなく、「言いたいことがあったら書いてね」と声をかけ、子どもが自発的に書けるように見守ることが大切です。

まさこ先生
まさこ先生

親は書かれた内容を否定せず、「そうだったんだね」と受け止めることで、子どもは「ここに自分の気持ちを表現していいんだ」と安心できます。

「なぜ?」ではなく「どうしてそう思ったの?」と問いかける

この時期に重要なのは、親の「聞く力」です。子どもが「むかつく」と言ったとき、すぐに「なぜ?」と理由を尋ねると、子どもは責められているように感じることがあります。代わりに、「どうしてそう思ったの?」と尋ねることで、子どもの心の奥にある本当の気持ちを引き出すことができます。

高学年(5〜6年生):自律を促す「対話」の場を作る

思春期を迎え始める高学年になると、子どもは親から自立しようとします。感情を親に話すことをためらうようになりますが、これは成長の証です。無理に聞き出そうとするのではなく、自然と話せるような関係性を築くことが重要です。

共通の話題から「心の窓」を開ける

直接「今日の気持ちは?」と聞くのではなく、共通の趣味や興味のある話題(ゲーム、スポーツ、音楽など)から会話を広げましょう。「このキャラクターが怒っているのは、どんな気持ちだろうね?」といった、一見すると無関係な話が、子どもの感情を表現するきっかけになることがあります。

感情を客観的に見つめる力を育む

高学年になると、自分の感情を客観的に見つめる力(メタ認知)を育てることが重要になります。「今、イライラしてるみたいだけど、どうしたら落ち着けるかな?」といった問いかけは、子どもが感情の波に飲まれず自分で解決策を探す力を育みます。

食卓の会話で子どもの感情が育つ

 

家族がそろう食卓での何気ない問いかけは、子どもの心の中にある出来事や気持ちを引き出してくれます。わが家では娘が夕食中、学校でのひとこまを話すことが多く、娘の気持ちを知るよい機会になっていました。また、私自身も今日の気持ちを口にして、子どもたちと感情を共有することに勤めていました。

食卓は、言葉だけでなく表情や空気感も交わる“こころの交差点”。毎日のごはんのささいな会話が、親子の感情を育てます。

自然とふれあう時間が育む、こころの感受性

近所の児童公園の木立

近所の児童公園の木立

家の近くの公園や庭先、ちょっとした林の中など、自然の中で過ごすひとときは、子どもの感情を育てる宝箱のような存在です。

風が木々を揺らす音に耳を澄ませたり、葉っぱの感触を手で確かめたり、小さな虫を見つけて驚いたり――五感を通して得た体験は、心に残りやすく、言葉にもしやすくなります

ある秋の日、娘と落ち葉を拾っていたときのこと。

むすめ
むすめ

この葉っぱ、なんだかさみしいね。

とぽつりと話した娘に、

まさこ先生
まさこ先生

どうしてそう思ったの?

と尋ねると、

むすめ
むすめ

茶色くなってて、ひとりで落ちてたから。

と答えてくれました。

自然の中では、感情を教え込まなくても、子ども自身が感じたことを自分の言葉で表現するきっかけが自然と生まれます。空を見て「今日の雲、元気そう!」と話すような自由な感性も、自然の中だからこそ引き出されるもの。親子で外に出て、感じたことを言葉にしてみるだけで、子どもの心の表現力はぐんと広がっていきます。

日常のひとことが、こころを開く鍵になる

 

感情表現は、特別な時間だけで育まれるものではなく、何気ない日常の会話の中にこそ、子どもの心をひらくヒントが隠れています。

朝の「よく眠れた?」、帰宅後の「今日はどんなことがあった?」、寝る前の「明日は何が楽しみ?」そんな一言が、子どもにとって「話してもいいんだ」「聞いてもらえるんだ」という安心感につながります

私が実感したのは、親のリアクションに子どもは敏感に反応するということです。私は子どもたちが、学校で先生に褒められたことや友達とケンカしたことなど、嬉しそうな表情をしているときや「むかつく」という短い言葉を発した時など、決して大げさにならない程度に必ず何らかの言葉を返してきました

たったそれだけのことですが、子どもたちは素直に自分を表現するようになったように感じます。親のひとことは子どもの感情表現を豊かにすることができる。そんな視点で、親子の会話を少しだけ意識してみませんか。

【わが家の体験談】気持ちノートで心が整った!

息子が小学校に入った頃、言葉で気持ちを伝えるのが少し苦手な様子がありました。そこで、小さな薄いノートに「今日の気持ちをひとつだけ書くこと提案してみたところ、短い言葉をから始まってだんだんと出来事と感情を結び付けて書くようになりました。

ある日、「イライラした」とだけ書いたことがあり、「そうだったんだね。」とだけ返事を書くと、翌朝、ノートには「先生に注意された。でも、ぼくも悪かった」と続きが書いてあり、彼なりに気持ちを整理していたことが伝わってきました。

まさこ先生
まさこ先生

家庭の中で、言葉だけでなく「書く」という手段を持つことで、子どもの感情表現はより自由に、深く育っていきます。

感情教育は未来への投資――学力だけじゃない“こころ”を育てよう

感情を言葉や動きで表せることは、子どもにとって人生を歩むうえでの大切な基礎力です。この力は、友達との関係づくり、挑戦への意欲、困難を乗り越えるための粘り強さにもつながります。

今回紹介した感情カード、ごっこ遊び、絵本の感情リレー、感情ジェスチャーしりとりは、すぐに家庭で取り入れられる方法ばかりです。

一日5分でも構いません。親子の会話に「今日はどんな気持ちだった?」と尋ねる時間を加えるだけで、子どものこころは少しずつ豊かに育っていきます。小さな積み重ねが、子どもの未来へ大きな贈り物となります。

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